魑魅魍魎

 

A「なぁ」

B「なんだ?」

A「『ちみもうりょう』って漢字でどう書くんだっけ?」

B「ちみ…なんだそれ?」

A「さまざまなばけもの、っていう意味があったと思うんだがな、漢字がわからないんだ」

B「そうか」

A「携帯の辞書機能で調べれるかな?」

B「おお、いいなそれ、やってみろよ」

A「いや、今俺の携帯電池切れてて…」

B「そうか、しゃーねーな、調べてやるよ」

A「悪いな」

B「ちみもうりょう…これじゃないか?」

A「おおそれそれ、…おい」

B「なんだ?」

A「小さすぎて見えないよ」

B「そうだな、この漢字なんか難しいしな…」

A「大きく出来ないのか?」

B「無理だ、そんな機能はない」

A「そうか…どうしたものか…」

B「お前の家辞書はないのか?」

A「辞書…あるぞ」

B「よし、それで調べよう」

A「しかしどこにあるか…」

B「…」

A「とにかく探そうや」

B「そうだな…」

 

2時間経過

 

B「あった!」

A「マジ!?どこにあった?」

B「冷蔵庫の野菜室…なんでこんなところにあるんだよ」

A「ああ、多分酔って帰って来た時に…」

B「いや…やっぱいい、それより調べよう」

A「そうだな」

B「ちみもうりょう…あったぞ」

A「おお、これか」

B「しかし…これも字がかなり小さくないか?」

A「うん、見えないよ」

B「なんか損した気分だ…」

A「2時間無駄になったね」

B「漢字辞典はないのか?」

A「ない」

B「仏語辞典とかはあるくせに…どんな家だよ」

A「本屋行く?」

B「そうだな」

 

C「いらっしゃいませー」

B「さあ、本屋だ」

A「辞書辞書…あったよ」

B「これか」

A「なんか見たことない漢字が並んでるぞ…」

B「お前…それ中国語辞典だぞ」

A「そうか、義務教育からやり直しかと思ったよ」

B「大袈裟だろ、それ」

A「これが漢字辞典だよね」

B「おお、それだな」

A「しかしこれ…一文字ずつ調べるのめんどいね」

B「しかたないさ、2冊使って手分けして探そうや」

 

10分経過

 

A「手がだるい〜…」

B「なんか店員の視線を感じるしな…」

C「…」

B「あった、これで最後か」

A「OK、帰ろうか」

C「…ありがとうございましたー」

 

A「ふぅ…これで漢字が判明したね」

B「『ちみ』はこういう字だな」

A「あ、こういう字か…」

B「『もうりょう』も調べたんだろ?」

A「うん、この通り…あれ?」

B「どうした?」

A「字を写したメモ…落とした…」 

B「本屋に落としてきたんじゃないか?」

A「っぽい」

B「本屋で不審な動きをした挙句に漢字で『もうりょう』なんて書いたメモ落としたら…」

A「絶対不審者だよね」

B「…」

A「…」

 

A「そうだ」

B「何?」

A「パソコンのワープロソフト使えばいいんじゃない?」

B「というと?」

A「うん、文字の大きさを変えることが出来るからさ」

B「なるほど、それなら見れるな」

A「ところでパソコン持ってる?」

B「ない」

A「僕も」

B「…」

A「…」

 

D「いらっしゃいませー」

A「電気屋についたぞ」

B「これで調べれるな」

A「パソコンコーナーは…あった」

B「よし、早速ワープロソフトを立ち上げろ」

A「…あれ?」

B「どうした?」

A「スクリーンセーバーの解除にパスワードが必要だって…」

B「パスワード?」

A「うん、これ解除しなきゃこのパソコン使えないよ」

B「パスワードか、これをこうして…」

 

ピコーン

 

A「すげぇ!解除しちゃった!!」

B「…」

A「すげぇや!!どうやったの?」

B「いや…適当に押しただけだ…」

A「…マジ?」

B「うん」

A「…一生分の運を変なところで使っちまったな」

B「…言うなよ」

A「まあいい、これでワープロソフトを…よし」

B「立ち上がった、さあ、文字を入れるんだ」

D「いらっしゃいませー、どのようなパソコンをお探しですか?」

A「え?あ…いや…」

D(あれ?このパソコン熱帯魚のスクリーンセーバーが流れてるはずなんだけどなぁ…?)

B「いや、ちょっと僕らで決めるんでいいですよ、別に」

D「あ、そうですか…わかりました」

B「さあ、早く今のうちに…」

A「そうだな…」

D(なんかあの客怪しいなぁ…スクリーンセーバー解除も謎だし…)

A「…で、サイズ変更…と、できた!」

B「よし、俺がメモするぞ…」

D(なんかメモしだしたぞ…怪しい…行ってみよう)

A「やばっ!さっきの店員がこっち来てる!」

B「不審に思われてるんだよ、さりげなく逃げよう、走るなよ」

A「おう…」

D「ワープロソフト?なんか大きなフォントで魑魅魍魎って…あいつら相手にしない方がよさそうだ…」

 

B「ふぅ…なんか途中で追ってこなくなったな」

A「多分急いだせいでワープロソフト立ち上げたままだったからだよ…」

B「けど何とか漢字がわかってよかったな」

A「うん、ありがとう」

B「ところでこの漢字何に使うんだ?」

A「いや、気になっただけ」

B「…え?」

A「気になっただけ」

B「…それだけのためにこんな苦労をしたのか…?」

A「そうだよ」

B「…」

A「はは、やだなぁ、怖い顔して…え、ちょ、ちょっと…ぎゃー!!」

 

 

Aは魑魅魍魎の一員となった…。